悩む女性

うちの子(自閉症児)は全然、私の言うことを聞いてくれない…うちの子はバカなの?

三堀三堀

待ってください。実は、それはお子さんの賢さゆえかもしれません

発達障害児の育児において、「子供が言うことを聞いてくれないこと」は大きなテーマの一つだと思います。

ただ、言うことを聞いてくれないのは、発達障害児の存在としての賢さゆえかもしれません。

発達障害児がもつ”存在としての賢さ”

例えば、定型発達児の場合だと、親が間違っていたとしても、子供のほうが我慢をして言うことを聞いてくれたりしますが、発達障害をもつ子はそうではないかもしれません。

例えば、親が子供の箸の持ち方を注意をしたとして、定型発達児であれば「ふーん」と言って、言われたとおりの持ち方を試みてみるかもしれませんが、自閉症児の場合は、そこで大きな癇癪につながることも多々あると思います。

三堀三堀

しかし、これは道理を考えれば、親のほうが間違っているかもしれません。

世界中を見渡せば箸をもつ民族も限られている中で、しかも、人それぞれの個性がある箸の持ち方にたいして、親が一方的に「これが正しいから、そうしなさい」というのは、あまりにも道理(事実関係)に合わないでしょう。

ですので、この場合、反発をした自閉症児に賢さがあると思います。
もちろん、ほとんどの場合、本人が道理を理解しているというわけではないのですが、自閉症児には、親の道理に合わない行動にたいして反発できる「存在としての賢さ」があることが多いです。

まず、育児の前提としておさえておきたいのは、「親が間違っているのに言うことを聴く子が賢いわけではない」ということです。

ですので、親の言うことを聴かないから、育て方を間違えたと思う必要はないでしょう。

例えば、定型発達児でも、親の言うことを聴きすぎて「思考のブラックボックス※」が増えてしまい、大人になっても自身の行いを”なぜ、そうしているのか?”が分からないままになってしまっていることが多くなりがちです。
また、この状態であると、さまざまな判断を間違えていってしまうのです。

※【思考のブラックボックス】
自身でもその考えの中身は分からないけど、その考えに盲目的に動かされてしまう状態

発達障害児を賢く育てるにはこの、思考のブラックボックスをつくらないような関わり方が必要です。
また、そのことにより、発達障害をもつ子供との関わりがよりスムーズになっていくでしょう。
(今回の内容もまた、定型発達児にとっても大切だと思います)

発達障害をもつ子供と一緒に”失敗”を重ねていく

自閉症などの発達障害をもつ子供の育児では、「明らかに的外れな行動をしようとする子供の行動」を止めたくなるときが何度も訪れると思います。

しかし、発達障害をもつ子供の多くは、実際に失敗をしてみないと納得もしないし、学べないことがとても多いです。

そのため、親が事前に「それをしちゃダメ!」と言ったとしても、発達障害児の精神世界の中では、なぜ、そうしてはいけないのか分からないまま、ということです。

そのため、仮に、子供の行動が的外れであったとしても、子供に付き添って一緒に失敗していくのが大切だと思います。

すると、子供が納得してくれる上に、思考のブラックボックス化を防ぐことができ、子供を賢く育てることができます。

していく必要のある”失敗”の具体例

  • 寒い日なのに子供が半袖を着ていきたいと言った→暖かい上着を持っていき、実際に、子供が寒くなってから子供に暖かい服を着せる(その際に、バカじゃないの?みたいなことは言わない)
  • 子供が朝の学校に遅刻しそう→実際に遅刻をさせ、子供がどう感じるのか様子を見る(親は”遅刻してはダメ”という先入観や衝動があるが、道理を考えれば、特別な理由もなく、本人の自由意志を奪ってまで急がせるのは子供を奴隷扱いしているのに近い)
  • 子供が動画を見たいと言って寝ない→あと〇個の動画を見たら一緒に寝ようねと約束しつつ、寝るのを試みる(究極、次の日に起きれなくなるのを覚悟で子供が寝るまで子供の行動に付き添う)

これらの実践には相当な過酷さがあるとは思いますが、長期的には、子供の納得度が増す分だけ明らかに楽になっていくと思います。

無理に親のいう事を聴くと、子供の中に思考のブラックボックスが出来てしまい、それらは、子供の中に親への反発心やイラだちを生みだしていくでしょう。

ただ、子供が納得する形で付き添うことをつづけると、子供の感情のコントロール力や知性までもが上がっていき、長期的にみると楽になっていくと思います。

それで、この思考のブラックボックスは私たち大人にとっても大きな問題になっています。

思考のブラックボックスがもたらす私たちへの影響

親から何か強制的にいう事を聞かされた経験は、何らかの強迫観念や不安、盲目的な思い込みを生みだします。

例えば、親が「男は女性を支配するもの」「女は受け身であるもの」という考えを子供に刷り込んでいた場合、子供は性別に囚われることが増えます。

これは思考のブラックボックスとなり、女性であれば、自分でもよく分からないままに強引な男性と付き合い、結婚をして、痛い目をみてしまうことがあります。

不思議なものですが、思考のブラックボックスが多ければ多いほど、人生における満足度と自由度は下がってくるものだと思います。

そのため、子供を育てる上で、子供に思考のブラックボックスができないようにすることが、子供の人生を助けることに繋がっていくでしょう。

また、さらに言えば、発達障害児を育てる中で、自分の思考のブラックボックスを開けざるを得ないことの連続になり、それを自発的にできるほどに、育児がスムーズにいきやすくなると思います。